【耳鼻科専門医が解説】耳かきしすぎてない?やりすぎは最悪癌になることも【正しい耳掃除のやり方】

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耳かきってさ、お風呂上がりにすると気持ちいいよね!
耳あかがごっそりとれた時なんて爽快でさ
ついつい毎日やっちゃうよね

耳が痒くて気づいたら、いつもやってます。
もう癖になっちゃってて

こーゆー耳かき大好きさん、いますよね。あなたもそうではありませんか?

でも、耳かき・耳掃除のしすぎは、大変な病気になることもあります。

そして実は、自分での耳掃除は必要ありません!

今回は、耳鼻科専門医が「正しい耳掃除のやり方」「耳かきしすぎるとどうなってしまうのか」について、解説します。

そもそも耳あかとは?:表皮、皮脂腺・耳垢腺からの分泌物

耳あかは何でできている?

耳の構造と耳あかの自浄作用
耳の構造図は「看護roo」HPから引用、改変

耳の入り口から奥の鼓膜までを「外耳道」といいます。

・外耳道の長さは約3.5㎝
・外側3分の1は軟骨で囲まれる→軟骨部外耳道:毛、皮脂腺、耳垢腺がある
・内側の3分の2は骨で囲まれる→骨部外耳道:毛、皮脂腺、耳垢腺はなく、薄い皮膚のみ
・外耳道や鼓膜の古くなった表皮ははげ落ちて、徐々に奥から外耳道の人り口の方に移動する→これを自浄作用といいます。
・耳あか、このはげ落ちた表皮、皮脂腺・耳垢腺からの分泌物が混ざり合ったもの

したがって、

正常の状態では、耳あかは自然と外に排出されるので、頻回の耳掃除は不要です!

耳あかは何のために存在するの?

耳あかには、

殺菌作用:細菌やカビの繁殖を防ぐ。酸性かつタンパク質分解酵素があるため
・うすい外耳道皮膚や鼓膜を外部の刺激から保護する働き
・虫の侵入を防ぐ働き

があります。なので、とりすぎもよくないんですね!

耳あかの種類

耳あかには2つの種類があります。

乾いた耳あか:かさかさした耳あかで、日本人に多く、80%がコレ。
湿った耳あか:べたべたした耳あかで、欧州系・アフリカ系の人種はほぼコレ。

この乾いた、湿った耳あかの違いは、耳垢腺の分泌物の性状の違いによります。

ちなみに、耳あかの遺伝子の保有率を調べた研究では、乾いた耳あかの遺伝子保有率は、岐阜県と京都府で最も高く、沖縄で最も低い、と報告されています。

どうして人は耳かきするのか?:気持ちいいから

それは、単に気持ちがいいからです。

その理由は2つ。

・外耳道の感覚神経の1つである「迷走神経」の枝を刺激すると、気持ちいいと感じるから
・耳あかがごっそりととれると、「たくさんとれた!」と爽快で嬉しくなるから
自分でやっても気持ちいいですが、他人にやってもらってもまた別の気持ちよさがありますよね。

中には、耳かきサービスのビジネスなんかもあったりして、ビジネスが成立するほどの気持ちよさだとわかります。

また、既に慢性的に耳のかゆみがある人は、心理的なストレスでかゆみが増悪することが知られています。

そのため、イライラしたりストレスを受けると、耳かきをして落ち着かせる、という行動をとることになります。

ちなみに、10~20%の方は、外耳道を触ると咳がでます。

これも、外耳道に分布する迷走神経への刺激が原因で起こります。

耳掃除で咳が出てしまう人は、より注意しましょう!

耳かきしないとどうなるの?

耳垢栓塞

頻 度:★★★★☆(高齢者)
重症度:★☆☆☆☆

基本的には、耳あかの自浄作用があるため、ずっと耳かき・耳掃除をしなかったとしても、問題になることはまずありません。

しかし、高齢者などの耳あかの自浄作用が低下している方は、耳あかが自然に外に排出されずに、奥にどんどん溜まっていく場合があります。

そうなると、耳あかがまるで耳栓のように外耳道を塞いでしまう「耳垢栓塞」という状態になります。

そうすると、耳栓をしたのと同じ状態になるため、難聴になります。

最近、おじいちゃん、耳が遠くなっちゃって

と、言って、耳鼻科を受診された方をみてみたら、耳あかがぎっしり詰まっていた、ということはよくあります。

また、自分で耳かきをして、知らないうちに奥に耳あかを押し込んで、耳垢栓塞になるケースもありますので、注意しましょう!

いずれも、こうなっては、自分では取れないので、耳鼻科を受診して、とってもらってください。

耳かきしすぎるとどうなるの?

外耳炎・外耳湿疹

頻 度:★★★★★
重症度:★☆☆☆☆

耳掃除で外耳道の皮膚をひっかくことで、細かなキズができます。

そこにバイ菌が入ると、炎症を起こして、痛み、腫れ、耳だれがでます。

この状態を「急性外耳炎」といいます。

頻回の耳かきで、知らないうちに外耳道の皮膚を傷つけている人は、かなりいます。

耳かき後に耳が痛くなった、耳だれがでてきた

と受診されます。

また、慢性的な耳かき刺激で、皮膚が常に炎症を起こして、かゆみが主な症状となっている場合、

「慢性外耳炎」または「外耳湿疹」という状態になります。

頻回の耳掃除は、耳あかの自浄作用を低下させるため、耳あかが溜まりやすくなり、炎症の治癒を妨げます。

そうすると、ますますかゆくなってしまい、より耳かきをするようになって、という悪循環にハマってしまいます。

自分自身が、このことを十分に理解しないと、かゆみに負けて結局耳かきしてしまうので、なかなか抜け出せなくなります。
耳のかゆみは、耳かきで抑えるのではなく、かゆみ止めの軟膏や点耳薬で抑えるようにしてください。

外耳道狭窄

頻 度:★★☆☆☆
重症度:★★★☆☆

長い間、ずっと頻回の耳かきをし続けると、だんだんと外耳道の皮膚が分厚くなってきて、外耳道の中が狭くなってきます。

ボールペンの芯ほどのすき間しかなくなると、簡単に耳あかが詰まるようになるため、難聴となります。

この狭い空間にたまった耳あかは、耳鼻科医でもとるのが困難です。

これも、常に耳栓状態です。

難聴に対する対処法としては、補聴器をつけるか、手術で分厚くなって部分を取り除くことになります。

もぱんは、20~30年の耳かき習慣があって、外耳道狭窄になってしまった方を手術した経験があります。

手術となると、全身麻酔で1週間程度の入院が必要となるので、時間もかかりますし、体への負担もそれなりにあります。

しかも、外耳道狭窄は手術したとしても、術後にまた少しずつ狭くなって再発することも多く、なかなか大変なんです。

できれば、このような状態にならないようにしてほしいですね。

外耳道癌

頻 度:☆☆☆☆☆
重症度:★★★★★

頻回の耳かきは、慢性外耳炎や外耳湿疹を引き起こすことは、先程説明しました。

その状態が長く続くと、ごく稀に「外耳道癌」を発症することがあります。

 えっ!?と思いますよね。

頻度は、約100万人に1人、と高くはないですが、

長年耳かきをしすぎると、癌になる可能性があることを知らない人は多いと思います。

癌は、命にも関わる病気です。

みなさん、まさか耳かきしすぎで癌になるかもしれない、とは思ってもいないでしょう。

耳鼻科以外の医者も知らないと思います

耳鼻科でも外耳道癌を診断・治療した経験のある医師以外は知らないかもしれません。


もぱんは、大学病院に勤めていた頃、何人も外耳道癌の方を治療してきました。

やっぱり「昔からよく耳かきをしていました」という人が多かったです。

外耳道癌の治療は、主に手術放射線化学療法です。

どちらの場合も、耳はほとんど聞こえなくなる、と思ってください。

治療の過程で、聴力を残すことはかなり難しいです。それよりも癌を取りきる、治しきる方を優先させるからです。

早期癌であれば、聴力はなくなりますが、命は90%以上助かります。

ただ、進行癌の状態であれば、命を助けるのも危ういです。既に転移していることも多いからです。

外耳道癌の治療経験があるからこそ、今回はこの事実を伝えたいと思い、この記事を書きました。

鼓膜穿孔

頻 度:★★★★☆
重症度:★★☆☆☆

耳かきの竹串や綿棒で、奥まで突いてしまい、鼓膜に穴があくことがあります。

自分一人しかいない状況で、鼓膜を破ってしまうことはありませんが、

よくあるシチュエーションとして、

・耳かき中に子供が突進・ぶつかってきて、奥まで突いてしまった
・竹串についているアクセサリーにネコが反応して、竹串にぶつかってきた

というのがあります。

みなさん、耳かきをするときは、くれぐれも周りに誰かいないか、注意してください。

一人で落ち着いて耳かきができる場所を探しましょう。

鼓膜穿孔の治療は、自然閉鎖を待つか、自然閉鎖しない場合は手術で鼓膜の穴を閉じます

外傷性耳小骨離断

頻 度:★★★☆☆
重症度:★★☆☆

耳かきの竹串や綿棒で、奥まで突いてしまい、鼓膜に穴があき、さらに音を伝える骨である耳小骨が外れることがあります。

こうなると、音を電気信号に変換する装置である「内耳」まで音が伝わりにくくなってしまうので、難聴になります。

これは、鼓膜穿孔と違って、自然に治ることはないので、手術が必要となります。

外傷性外リンパ瘻

頻 度:★★★☆☆
重症度:★★★★

耳かきの竹串や綿棒で、奥まで突いてしまい、鼓膜に穴があき、さらに音を伝える骨である耳小骨に衝撃が加わります。

すると、内耳の入り口に付着している耳小骨(アブミ骨)が外れて、内耳の中にある外リンパ液が漏れてくることがあります。

これを「外リンパ瘻」といいます。

内耳には、

蝸牛:音の信号を電気信号に変換する装置→やられると難聴
三半規管:バランス感覚・平衡感覚を司る装置→やられるとめまい

があります。

外リンパ瘻では、めまい、難聴が出現します。

ひどい場合は、入院してステロイドの点滴と安静が必要です。

それで外リンパ液の漏出が止まればOKですが、止まらない場合は、手術で漏れ出ている部分を塞ぐ必要があります。

外傷性顔面神経麻痺

頻 度:★☆☆☆☆
重症度:★★★★

耳かきの竹串や綿棒で、奥まで突いてしまい、顔を動かす神経である顔面神経を損傷することがあります。

すると、顔の動きが悪くなったり、顔が曲がったりします。

重症なら入院してステロイドの点滴をします。

あまりにもひどい場合は、手術で顔面神経の周りの骨を外したり、完全に断裂している場合は、神経をつなぎ直したりします。

顔面神経がダメージを受けると、むくみますが、神経は固い骨の筒の中を走っているため、ある程度むくむとそれ以上むくめなくなり、自分で自分を締め付けている状態(絞扼)になります。

そのため、手術で周りの骨を外してあげると、圧が開放されて治りがよくなります。

耳かきの適切な頻度・やり方は?

頻度:しない、月1回

繰り返しになりますが、耳あかには自浄作用があるため、ずっと耳かき・耳掃除をしなかったとしても、問題になることはまずありません。

アメリカ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の2017年のガイドラインでも

・耳に問題ない人は、自分で耳掃除をする必要はない
・綿棒で闇雲に耳あかをとらない方がよい
とされています。
耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください。
と書かれています。

耳に問題ない人が耳掃除をするメリットより、先程述べたデメリット・病気になる可能性の方が上回るからです。

問題のあるというか、注意すべきなのは、「耳垢栓塞」の項目でお話した、自浄作用が低下する高齢者です。

高齢者は耳垢栓塞の可能性があるので、定期的な耳掃除が必要になる場合がありますが、

それも一度耳鼻科を受診してから、どうすればよいか、指示を仰いでください。

もし、自分でやる場合、「月に1回」程度で十分です。

多くても数週間に1回までにしてください!

でも、毎日やったら、やった分だけ耳あかがとれてくるんだけど?
ほら、綿棒に少しついてるでしょ?

と、言う方がいますが、それは

正常の皮膚を綿棒で無理矢理こすって、耳あかが付いているようにみえるだけです。
そんなことをすれば、皮膚が傷ついて、外耳炎や湿疹になるのも、分かってもらえるかと思います。

 

でも、綿棒で奥まで入れると、いつもガサゴソって音がして、耳あかが溜まってるんだと思うなあ

それはですね、

奥にある鼓膜を綿棒で触って、ガサゴソ音がしているだけの可能性があります。
鼓膜を綿棒で触って音が鳴っている場合、そのガサゴソ音はいつまで経ってもなくなりません。
だって、耳あかじゃなくて、鼓膜なんだから。
音だけで、耳あかがあるかどうか、の判断もできないんです。
気になるなら、やはり一度耳鼻科を受診してください。

やり方:耳の入り口から1㎝までで軽く

やり方は、綿棒にベビーオイルなどを垂らして、耳の入り口から1㎝程度の深さまで(軟骨部外耳道まで)を軽くこする程度です。

但し、太すぎる綿棒は、逆に耳あかを奥に押し込んでしまうことがあります。

また、竹串タイプは固く、皮膚を傷つけやすいので、推奨しません!

あと、お風呂上がりの耳かきもやめた方がよいです。

というのも、お風呂でお湯がついた状態の皮膚は柔らかくなっており、傷つきやすいからです。

もし、お風呂上がりに耳に水が入って気持ち悪い、耳かきしたくなってしまう場合は、耳栓や綿球を入れてお風呂に入ってください

困ったら耳鼻科に受診を!耳掃除も耳鼻科医の仕事です

耳かき・耳掃除について、まとめます。

・耳に問題ない人は、自分で耳掃除をする必要はない
・やる場合、月に1回で十分
やりすぎは、癌など恐ろしい病気になる可能性がある
・やり方は、綿棒にベビーオイルを垂らして、耳の入り口から1㎝程度の深さまでを軽くこする
高齢者自浄作用が低下しているので、気になるなら一度耳鼻科で診てもらう
世の中、間違った耳かき・耳掃除を行っている人がホントに多いです。

 

患者さんの中にも、正しくやっている人はほとんどいません。

 

この記事をみて、是非正しい耳かきについて、知ってほしいと思います。

 

「たかが耳かき」と思っているかもしれませんが、耳かきのしすぎは、癌という怖い病気のリスク因子であることもお伝えしました。

 

この事実は、外耳道癌の治療経験があるからこそ、是非伝えたいと思い、今回の記事を書きました。

 

とにかく、耳で気になること・困ったことがあれば、自分で安易に判断せずに、まず耳鼻科を受診してください。

 

耳掃除も耳鼻科医の立派な仕事です!

 

ただ耳あかをとってもらうだけで医者にかかるなんて、恥ずかしい

なんて、思わずに、受診してくださいね。

【参考文献】
1)飯野ゆき子:耳垢の雑学.JOHNS 26(7): 963-966, 2010.
2)上出洋介:Q 耳掃除はしたほうがよいですか.小児科診療 75(11): 2131-2134, 2012.
3)後藤友佳子:湿疹.JOHNS 33(12): 1653-1656, 2017.
4)長谷川信吾, 丹生健一:外耳道悪性腫瘍.MB ENTONI (159): 57-62, 2013.
5)Seth R Schwartz, et al:Clinical Practice Guideline (Update): Earwax (Cerumen Impaction). Otolaryngol Head Neck Surg. 2017 Jan;156(1_suppl):S1-S29.

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