【医師かつ経験者が語る】精神科へ行くべき「うつ」の14の兆候【体験談あり】

医療・医学

 

今回は、医師であり、大学病院の激務と育児の両立に耐え切れず、抑うつ状態となり、休職した経験があるもぱんが、

医学的見地も踏まえつつ、精神科へ行くべきうつの兆候について解説します。

・ブラック企業で働いていてしんどい方
・ワンオペ育児で追い込まれている方
・もう何もかもが嫌になってしまっている方

にコレをみて、当てはまっていると思ったら、すぐに精神科を受診してほしいと思います。

「精神科」と聞くと、敷居が高く感じるかもしれませんが、アナタの辛さを受け止めてくれる優しい先生が待っていますから、どうか頑張りすぎないで、一度診てもらってください!!

うつ病の症状

うつ病とは、下記(1)~(9)のうち、5項目以上が2週間以上ほとんど毎日、一日の大半続いている状態です。

そのうち、(1)か(2)は必須となっています。

【うつ病エピソード】
(1)気分が沈む、落ち込む、憂鬱
である
(2)趣味や娯楽が「楽しい」と感じられない
今まで関心があったことに興味が持てない

(3)食欲がない、おいしいと感じられない
      その結果、体重が減る
(4)寝付けなくなる、途中で目が覚めてしまう、ぐっすり眠れない
(5)焦りや緊張から、そわそわしてじっとしてられなくなる
(6)疲れやすい、やる気がでない
(7)自分には価値がないと感じる、
   自分が悪い・自分のせいだと自分を責める
(8)考えがまとまらず、注意散漫になる。
     集中力がなくなる。決断できなくなる。
(9)もう死んでしまいたいと考える。
上記の兆候が複数出ているようなら、既に赤信号です!精神科にかかりましょう!

 

「うつ病」と診断されなくても、上記の「うつ病エピソード」にあてはまる場合は、

抑うつ状態」と言われます。

日本人が、一生のうち、どこかのタイミングでうつ病にかかっている確率は約6%と言われています。

うつ病になると、働けなくなり収入がなくなる、という社会的な影響が大きく、さらに

心筋梗塞、脳血管疾患、癌、腎臓病を持つ方がかかると、その身体疾患の病状も悪化しやすくなります。

また、一度良くなってもまた悪化(=再発)しやすい疾患です。

自殺者の30~60%がうつ病にかかっていた、という報告から分かるように、最悪の場合、死を選んでしまう疾患です。

抑うつ状態になると、仕事上どういった状況になるか

遅刻・欠勤・早退が増える

憂鬱、眠れてないから朝起きて既に疲れている、しんどい、仕事が辛い→仕事に行きたくない

という思考に至り、遅刻・欠勤・早退が増えます。

以前のように、仕事量がこなせない、ミスが増える、能率が下がる

仕事が辛い・嫌な状態なので、仕事がだんだんできなくなります。

上司や同僚との人間関係が悪化する

仕事ができなくなり、反応が乏しくなったり、過度な焦り・イライラを示したりして、人間関係が悪化していきます。

飲酒・喫煙量が増える

嫌な気持ちから逃れるために、お酒を飲む量やタバコを吸う量が増えます。

他人と接するのを避ける様になる

何もかもが億劫になり、やる気がでないので、次第に人と接するのを避ける様になります。

そうすると、さらに人間関係が悪化という悪循環に陥ります。

どの症状が出やすいか

一般的には、まず(4)不眠が出現することが多いです。

うつ病患者の80~85%に不眠が認められます。

その後に、「(1)気分が沈む、落ち込む、憂鬱」「(2)趣味や娯楽が『楽しい』と感じられない、今まで関心があったことに興味が持てない」といったうつ病の中核となる症状が現れます。

また、うつ病と診断された勤労者を対象とした研究では、

最初に自覚した症状:気分の落ち込み、疲れやすさ、不眠

最初に自覚した状況:人間関係の悪化、仕事量がこなせない、飲酒量・喫煙量が増えた

が多かった、と報告されています(下図参照)。

小林由実:勤労者におけるうつ病早期の疾病性と事例性についての検討.臨床精神医学 42(10): 1241-1249, 2013.より引用

不眠だけだと、「最近何だか眠れないなぁ」だけで済ましてしまい、うつの初期症状と気付かないこともあります。

また、人間関係の悪化は、うつの兆候というよりも、単なるトラブルとして捉えがちです。

単一の症状や状況だけでは、抑うつ状態と考えるのは難しいので、やはり、

これまで述べた複数の症状や状況がある場合には、

心と体が悲鳴を上げている、赤信号を点灯させていると考えた方がよいでしょう!

体験談

ここからは、もぱんの実際の経験談をお話しします。

私は、耳鼻科医3年目の時に、市中の総合病院から大学病院へと異動になりました。

大学病院では、今まで見たことのない疾患や癌の診療を行っており、分からないことだらけでした。

毎日必死で勉強しても、追いつきません。

始めの半年は、妻が妊娠中だったこともあり、土日にあまり出かけずにずっと勉強していました。

それでも一向に耳鼻科医として一人前のレベルには到達できず、夜遅くまで診療や残って勉強する日々でした。

そんな中、大学病院に異動して半年後に、第一子が誕生しました。

自分もとうとう父親になった!これから育児も頑張るぞ!と意気込みました。

初めてで慣れない育児も、どうしていいか分からないことの連続でした。

それは妻も同じです。

出産後の女性の体は、交通事故後の満身創痍の状態から、子育てをスタートするといいます。

夜泣きで眠れず、24時間目が離せない赤ん坊の育児に対して、妻はどんどん疲弊していきました。

精神的にも不安定になり、私の言動に少しでも気に入らない所があると、文句を言いました。

結婚してから一度もケンカしたことがなかったのに、三日三晩毎日ケンカするようになりました。

自分では、仕事も忙しい中、精一杯、家事・育児へ参加していたつもりですが、

仕事で夜遅くなる、当直で家にいない、土日も勉強会でいない、という状況だったので、妻への負担は大きくなっていました。

仕事は、勉強のかいあって、出来ることが増えていきましたが、その分仕事も増えていきました。

専門医を取得してからは、一層忙しくなりました。

・朝から夕方まで休む間もなく外来診療
・お昼ごはんは、コンビニで買って、診療の合間にサンドイッチを流し込む
・外勤(という名の平日日中のバイトのこと)先へ高速道路で車をぶっとばして着いたらすぐに診療
・午前の大学での診療がおしているので、外勤先に毎回遅れていくハメに
・手術日は、朝から晩までずっと手術
・時には、朝から深夜0時過ぎまで長時間の手術
・当直中は、何回も患者問い合わせの電話で起こされて、まともに眠れず
・当直明けに休みはなく、連続36時間勤務は当たり前
・患者さんの診療(外来、手術、病棟)が終わっても、学会発表、論文執筆、研究データの収集と解析で、家に帰るのは夜遅く
・色んな合間に学生、研修医、下級医への指導

こんな仕事をしながら、平日帰ったら家事や育児、土日も自分の時間なんてなくストレス発散もまともにできず、家族のために尽くしました。

妻は、私が仕事で忙しいのは理解してくれていましたが、その分自分が大変になるため、だんだんと仲は険悪になっていきました。

次第に、お互いに仕事、家事育児をやって当たり前で、感謝の気持ちがなくなっていたと思います。

年を重ねるごとに、仕事が忙しくなって、手が回らないようになってきたため、私は、教授に業務改善を強く希望しました。

ところが、教授が言い放った言葉は

お前らは、まだ甘すぎる。俺が若い頃はもっと大変だった。

これについてこれないやつが悪い。そんなやつは要らない!

これを聞いた瞬間、もはや体力は底スレスレで気力だけでがんばっていた状態、何かがプツンと音を立てて切れました

こんなにがんばって、貢献しているのに、その苦労をねぎらってもらえず、もっと働け、というのです。

もうやっていけない、と思いました。

その3か月後から、抑うつを示す様々な症状や状況が現れました。

・今まで好きだった漫画やアニメを見ても、まったく楽しくなくなった

・夜寝付けなくなり、眠ったとしても、ぐっすり眠れていないような感じになった

・過去に戻りたい、全く知らない別の世界にいきたいと願うようになった

・過去に戻る方法や、異世界に行く方法をググりまくった
 でもそんな方法は、どれも都市伝説レベルで、当然ながら存在しないと知って落胆した

・朝起きたら、「ああ、またこの同じ世界だ」と思って悲しくなった

・自分が生きている意味ってなんだろう?何のために生きてるんだっけ?と頻回に考えるようになった

・確実に別の世界にいくには、死ぬしかないないんだろうな、とぼんやりと考える様になった

・他人に対して、過度にイライラしたり、食って掛かるようになった

・朝起きた時が、最も気分が悪い。仕事をしてると、少しずつ回復する(最後の方は、回復しなくなる)

・毎日15分以上平気で遅刻するようになった。それに対して罪悪感を抱かなかった

・休職する直前は、周囲から意図的に休む時間をもらえたが、休んでも何も回復しなかった

・ふとした瞬間に泣き出しそうになる

当然、うつについての知識は持っていました。

自分の状態がやばいな、とも薄々分かっていました。

それでも、

・今、自分が仕事を休んだから、周りの人に迷惑になる
・自分の代わりはどこにもいないんだから、がんばって仕事しなきゃ!
・育児も妻はいっぱいいっぱいだ。自分がなんとかカバーしなきゃ!
・自分のできる範囲・能力を上げれば、全部なんとかやれる!

と思って、最後の最後までがんばろうとしていました。

そして、ある日の朝、起きていつものように車に乗って、病院の駐車場に着きました。

でも、まだ仕事にいきたくなかったので、「もう10分休んでから、行くことにしよう」

10分経過、「もう30分休んでからにしよう」

30分経過、「もうちょっと休んでからにしよう」

しばらくぼーっとして

もうダメだ、仕事にいけない、体が鉛の様に重くて動かない

上司に休む旨の連絡を入れて、そのまま、泣きながら自宅近くの精神科に駆け込みました。

今までどれだけ辛かったのか、もう何もかも捨ててどこか遠くへいきたい

などと心中を吐露し、「適応障害による抑うつ状態」と診断されました。

先生から休職を勧められ、そのまま5カ月ほど休職することになりました。

その時は、まだ1週間くらいしたら復帰しようと思っていたんです。

急に休んで迷惑がかかるから、と。でも自分が思ったより病状はひどく、二度と大学病院には復帰しませんでした。

その後、元々いた市中病院に異動させてもらい、適度な労働環境の中で、フルタイム勤務に復帰することができました。

妻とも色々話し合い、家事の外注を行うことにしました。
(家事の外注については、下記を参照してね)
参考記事:【育児で時間がないママ・パパ必見】おすすめ家事時短サービス・家電・グッズ

こうして振り返ると、うつ病エピソードの(1)(2)(4)(6)(9)に当てはまっています。

状況的には、遅刻が増える、人間関係がやや悪化、が該当します。

また、死にたいという気持ちは強くはありませんでしたが、過去や別の世界に行きたいという逃避願望が強くでていました。個人的には、

・過去や別の世界に行きたい、と毎日のように願うこと
・思春期でもないのに、生きる意味をぐるぐる考えること

は、辛い現実世界から逃げ出したいと思っていることであり、このような思考になることも、うつの症状として注意すべきと思います。

そして、辛くて逃げ出したいのに、

・自分がいなくなったら、周りに迷惑がかかる
・自分の代わりはいないから、頑張らなきゃ!
 という思考はやめましょう!!

あなたが休んでも、代わりはいます!
だから、安心して休んでください!

これは、今回、ホントに思いました。

こういってはなんですが、私は耳科学を専門にしていて、年々自分と上司しか担当できない部分が増えてきていたので、絶対に替えが効かない、休めない!と強く思っていました。

実際抜けてみると、それで大学病院の診療ができなくなるわけでもなく、なんとか他のメンバーでカバーしてくれていました。

このように、強すぎる責任感のために、限界を超えて頑張ってしまう人は多いと思います。

でも、こういうと悲しくなるかもしれませんが、あなたがいなくても、会社や社会は回ります。

だから、限界までがんばって、心が病んでしまうくらいなら、早く逃げてください!!

一度、精神的に病むと、完全回復させるのは、難しいです。

私は、「適応障害」という、抑うつ症状を示すのに明確なストレス因があり、そのストレス因が解消されると回復する状態です。

もちろん、適応障害による抑うつ状態から、うつ病に移行することもあります。

1年以上経過していますが、完全に回復はしておらず、まだ通院は続けていますし、薬も飲んでいます。

以前は、無理しても大丈夫だった仕事量や精神的なストレスでも、気分が落ち込みます。

精神的に打たれ弱くなっているのです。

さらに、コロナ渦による外出制限等のストレスで、回復が遅れていると感じています。

精神科へ行くべき「うつ」の14の兆候 まとめ

まとめ

精神科へ行くべきうつの兆候をまとめます。

(1)気分が沈む、落ち込む、憂鬱

(2)趣味や娯楽が「楽しい」と感じられない
今まで関心があったことに興味が持てない

(3)食欲がない、おいしいと感じられない
その結果、体重が減る

(4)寝付けなくなる、途中で目が覚めてしまう、ぐっすり眠れない

(5)焦りや緊張から、そわそわしてじっとしてられなくなる

(6)疲れやすい、やる気がでない

(7)自分には価値がないと感じる、
  自分が悪い・自分のせいだと自分を責める

(8)考えがまとまらず、注意散漫になる。
   集中力がなくなる。
  決断できなくなる。

(9)もう死んでしまいたい、過去に戻りたい、別の世界に行きたいと考える。(10)遅刻・欠勤・早退が増える

(11)以前のように、仕事量がこなせない、ミスが増える、能率が下がる

(12)上司や同僚との人間関係が悪化する

(13)飲酒・喫煙量が増える

(14)他人と接するのを避ける様になる

そして、上記に複数あてはまるようなら、

・自分がいなくなったら、周りに迷惑がかかる
・自分の代わりはいないから、頑張らなきゃ!

とは思わずに、限界がくる前に、精神科へ受診してください!!

一度、精神的に落ちるところまで落ちると、回復するにはかなりの時間がかかります。

そうならないために、早めに危ない状態だと気付いて、専門家に相談しましょう。

医師であり、経験者であるもぱんからのお願いです。

どうか、自分の心と体を大切にしてください。

 

育児でしんどい方には下記↓も併せてご覧ください。

気分が沈んで家事ができない方は、時短サービスの利用がおすすめ↓

 

【参考文献】
1)小林由実:勤労者におけるうつ病早期の疾病性と事例性についての検討.臨床精神医学 42(10): 1241-1249, 2013.
2)瀬名波徹, 徳倉達也, 尾崎紀夫:うつ うつ病の分類と診断.臨牀と研究 96(5): 515-520, 2019.
3)吉村玲児, 小西勇輝, 池ノ内篤子:各種精神症状・疾患への対応 うつ病・双極性障害 – 診断と治療.臨牀と研究 97(9): 1073-1076, 2020.
4)中澤太郎:専門的介入の必要な燃え尽き.治療 101(5): 537-541, 2019.
5)黒木宣夫:過重労働と自殺の兆候と予防.ストレス科学 22(4): 245-251, 2008.

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