3日前から39度の発熱、頸部痛も出現し、食事摂取困難となり、受診した。FT3 3.68pg/mL、FT4 2.02ng/dL、TSH 0.235μIU/mL、HTg 500以上ng/mL、WBC 16,800/μL、CRP 30.25mg/dL。甲状腺エコー画像を示す。この疾患について、正しいものを2つ選べ。
a ステロイドを投与する。
b 穿刺・切開排膿を行う。
c 消炎後に下咽頭食道造影検査を行う。
d 疼痛部はしばしば対側へ移動する。
e 抗TSH受容体抗体が陽性である。
答え)b c
発熱、頸部痛、FT3高値、FT4高値、TSH低値(=甲状腺機能亢進)を認める。
エコーでは、甲状腺左葉の腫大と境界部不明瞭で内部不均質な低エコー域を認める.カラードプラでは血流の増加を認めない。
また、左葉甲状腺被膜外に低エコー域を認め、膿瘍形成が疑われる。
よって、診断は急性化膿性甲状腺炎。
鑑別疾患には、Basedow病や亜急性甲状腺炎がある。
Basedow病は炎症反応は正常であり、疼痛や発熱もなく、膿瘍形成しない。
亜急性甲状腺炎では、発熱や炎症反応上昇はあるが、膿瘍形成まではいかない。
疼痛部がしばしば対側へ移動するクリーピング現象が特徴的。
また、急性化膿性甲状腺炎は病変の主体が甲状腺外で上極寄りなのと、約90%が左側に発症するのが特徴だが、亜急性甲状腺炎はどこでもあり。
今回は、急性化膿性甲状腺炎の特徴によくあてはまる。
実臨床でも、初期の急性化膿性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎の鑑別が難しい場合もあり、亜急性甲状腺炎と思ってステロイドで様子をみてたら、炎症悪化、膿瘍形成に至ったというケースもある。常に両者の鑑別を意識しよう。
ちなみに、2020年多選択肢式では、亜急性甲状腺炎の問題が出題されている。
a ステロイドを投与するのは、亜急性甲状腺炎。
b 穿刺・切開排膿を行うのが正解。もちろん抗菌薬も投与する。
c 急性化膿性甲状腺炎の多くは、下咽頭梨状窩瘻を原因とした細菌感染であるため、消炎後に下咽頭食道造影検査を行う。
全身麻酔下の直達鏡検査で直接瘻孔を確認するのもよい。
d 疼痛部はしばしば対側へ移動するクリーピング現象は、亜急性甲状腺炎の特徴。
e 抗TSH受容体抗体が陽性になるのは、Basedow病である。
エコー画像はチェックしておこう。
参考資料:國井 葉, 天野 高志, 福成 信博:痛みを伴う甲状腺疾患 急性化膿性甲状腺炎.乳腺甲状腺超音波医学 10巻1号 Page26-29(2021.01)
福原 隆宏, 松田 枝里子:【甲状腺・副甲状腺-知りたいこと・知っておかねばならないこと】甲状腺炎症性疾患の診断と治療 急性化膿性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎.JOHNS 35巻6号 Page739-742(2019.06)
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