2020-52 52歳男性。5年来の嗅覚障害を主訴に来院した。

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鼻漏、鼻閉は認めていない。CTおよび生検の病理組織所見を示す。診断はどれか。

a 内反性乳頭腫

b 嗅神経芽細胞腫

c 好酸球性副鼻腔炎

d 多発血管炎性肉芽腫症

e 呼吸上皮性腺腫様過誤腫















答え)e

呼吸上皮腺腫様過誤腫(Respiratory Epithelial Adenomatoid Hamartoma:REAH)は,片側あるいは両側の鼻腔に多く発症する良性の腫瘤で,ポリープ様の腫瘤を呈する.
鼻閉,鼻漏,嗅覚障害など副鼻腔炎と同様の症状を示し,臨床的には慢性副鼻腔炎として取り扱われている場合が多い.
組織学的には,粘膜下の腺腫様増殖や線毛呼吸上皮が一列に並んだ腺組織の著明な増殖が特徴である.
発生が最も多いのは,嗅裂部,鼻中隔とされ副鼻腔 CT 画像において,REAH 症例では嗅裂の幅が拡大しているものが多い.

呼吸上皮腺腫様過誤腫多列にみえるが,偽重層上皮

偽重層上皮を構成する全ての細胞は基底板に接するが,細胞の高さが異なるため,上皮自由面に対して垂直に観察すると重層上皮様に観察される.

線組織は,杯細胞が豊富な偽重層線毛呼吸上皮で構成される.

アスタリスク*は,杯細胞.矢印は,偽重層線毛円柱上皮.

問題の病理画像は,偽重層になっているが,杯細胞があまりないようにみえるため,相当難しい.他の疾患の病理所見と違うことから,消去法で選ぶのが現実的か.

内反性乳頭腫:内向性に発育している

好酸球性副鼻腔炎:粘膜下に好酸球浸潤(ピンク色の丸)が著明

嗅神経芽細胞腫

a 小型円形細胞がびまん性・胞巣状に浸潤増殖

b 胞巣内には,微細線維構造物を中心に核が花冠状に配列するHomer Wright(HW)型ロゼット形成

典型的な所見としては,腫瘍胞巣周囲を囲むように一層のS100,SOX10蛋白陽性の支持細胞の出現が認められる.
免疫組織染色が鑑別診断に重要であり,神経内分泌腫瘍のマーカーのSynaptophysin,NSE,Chiromogranin‒A,CD56が陽性となる.これらの加え疾患特異性の高いマーカーとしてCalretinin が挙げられる.

多発血管炎性肉芽腫症

壊死性血管炎を伴う壊死性肉芽腫性炎である.炎症が強い場合は不規則な地図状壊死が著明にみられ,好塩基性の壊死物質や好中球が混じり,汚い印象を与える.


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